表面自由エネルギー 濡れ性 表面張力 >
表面自由エネルギー 濡れ性 表面張力
株式会社サーフテクノロジー
研究開発部
食品材料(粉体,ペーストなど)の付着抑制では,基材表面の様々な物理的・化学的特性が関与している。表面の諸特性を評価する特性として,濡れ性や表面張力,表面自由エネルギーなどがある。表面自由エネルギーは自由エネルギーというぐらいなので熱力学的パラメータなのだろう。熱力学は巨視的な状態間をエネルギーや温度で結びつける考え方でなかなか理解するのが大変である。僕は,科学的事象に関しては実体論的な解釈が無いと理解できない様だ,例えば,気体の状態方程式(PV=nRT),もっと言えばボイルの法則(PV=cont.)ですらピンとこず,体積を半分にすると圧力が倍になる根拠が良く理解できない。一方,実体(分子)論的に考えて,体積を半分にすることにより単位体積当たりの分子数,即ち分子衝突が倍になると考えると,よく理解できる。実際,実在気体では,分子の相互作用や体積があり,状態方程式は成立しないためビリアル係数で補正したり,成立条件を理想気体などと限定する段階で,熱力学的な発想からは逸脱しているように感じる。
熱力学的の批判を長々としたのは,熱力学的方程式の算出に延々と微分方程式が出てくるのが苦手であるという個人的理由もあるが,表面自由エネルギーを実在表面に適応すると,様々な課題が出てくることにもよる。
具体的には,自由表面が生成した段階で,表面は再構築され,実際の表面自由エネルギーも変わるはずである。更に,僕らが扱う実在表面は,固相・気相界面であり,特性や測定に係るのは金属では酸化表面であり,水分やガス吸着のある表面であり,強いて表面自由エネルギーと表現する意味は僕には分からない。
とはいえ,当社のような付着抑制を生業にしているところでは,表面の化学的特性の評価は必須で,濡れ性や表面形状の効果の理解のため必要である。実際,様々な現象を説明するのに分かりやすいので,表面自由エネルギーの成分分けを評価している。成分分けに関しても様々なモデルがあるが,当社では,水素結合成分に注目しているので北崎・畑のモデルを採用している。余談だが,畑先生は僕の学生時代の同じ学科の教授で,戦争中は風船爆弾の接着の仕事をしており,戦後はいわゆる民主的科学者の一員で原水協などの仕事もしており有名教授だった。確か僕のいた室の前か隣あたりに畑研究室があったはずだが,僕が授業に出ていないせいもあり講義を聞いたことが無いことが,今になってはチョット残念だ。
表面自由エネルギーの成分分けに様々なモデルがあることは述べたが,モデルはあくまでモデルであり,適応条件や個別的・例外的な事例を常に頭に置く必要もあるだろう。また,表面の原子や対象物の実体論的なイメージの構築が必要だと考える,今日この頃である。