硬さの測定と表面処理について >
モノにはそれぞれ異なる硬さがある。モノの形を変えようとして力を加えたときに、なかなか変形できなければ『硬い』となり、変形しやすければ『軟らかい』となる。つまり負荷に対する変形のしやすさ、と言い換えることもできる。
因みに、『硬度』というのは誤りで、正しくは『硬さ』(『面粗度』も、正しくは『表面粗さ』)。硬さは数値で表すことができるけど、単位はなく、それぞれの測り方によって数値が異なってくる。
硬さは様々な手法で測定することができ、ザっと挙げると以下のような手法がある。
①押し込み硬さ
・ロックウェル硬さ
・ビッカース硬さ
・ブリネル硬さ
・ヌープ硬さ
②引っかき硬さ
・マルテンス硬さ
・マイヤー硬さ
・モース硬さ
③動的硬さ
・ショア硬さ
それぞれの硬さの換算表はインターネットから容易に入手することができる。業界によっては使われる硬さ手法が異なるようで、値を言われてもピンと来ないことがたまに。
私たち、表面処理屋はロックウェル硬さ、ビッカース硬さを良く使う。Ti系、Cr系セラミックコーティング、またDLCなどの硬質コーティングはコーティングの厚さが1~3/1000mm(µmオーダ)のため、押し込み荷重が高いと圧子がコーティングを突き抜けて基材を測定してしまい、コーティングのもつ本来の硬さを測定することができない。そこで測定荷重を極めて軽くして、圧子の押し込み深さをコーティングの厚みの1/10に止めて硬さを測定する、『ナノインデンター』を使用する機会も増えてきた。また、窒化や浸炭といった浸透拡散処理は測定試料を切断して断面を樹脂に埋め込んで研磨し、表面からの拡散深さをビッカース硬さで評価することが多い(このときの埋め込み研磨と測定はホントに大変!)。
測定荷重が軽くなると圧子が明確に転写できなくなるため、表面粗さは滑らかでないと測定できない。とくにコーティングの硬さを測定するナノインデンターではそれが顕著。
耐摩耗性を向上したいから、とにかく硬いコーティングが欲しい。だけど使ってみたら剥がれたから、もうコーティングは使わない!という話もある。よく話を訊いてみると、コーティングの下地は軟らかい鋼材であったりステンレスだったりする。コーティングは極めて薄いので、負荷が掛かるとこの下地が変形し、その変形量に付いていけずに膜が剥がれてしまう。ゆで卵の殻をむくときを想像してもらうと理解しやすいと思う。コーティングの真下が硬ければ、大きな変形が抑制されてコーティングは剥がれにくくなる。つまり、『コーティングと下地の硬さのギャップを埋める』ことが効果的になる。
ここら辺のテクニック、得意です。色々な表面処理を組み合わせて提案させていただきます。