動的滑落法、表面テクスチャ >

動的滑落法、表面テクスチャ

 

 ここのところ動的滑落法を用いてその表面の特性を確認しています。精製水で試験していますが親水性の高い表面は傾斜角度を垂直に近い80度以上に大きくしてもなかなか液滴が滑落しません。またやっと滑落し出しても滑落中の後退接触角は水平に近い20度未満と小さいです。この後退接触角が小さいというのは、液滴滑落方向に対し前進接触角を形成する液滴の前端は滑落し出しているのに後退接触角を形成する液滴の後端はなかなか滑落し出さず(動き出さず)、液滴が尾を引くような感じで伸び、その結果後端接触角が小さくなるという事のようです。なんだか表面が、頑張って頑張って水滴をその場に留めよう!動かないでくれ!って、保持してるけど、お餅を焼いている最中に箸で摘まんで引っ張り上げると伸びますが、そのうち千切れてしまうのに似てるなぁと個人的には感じます。また表面によってはその液滴の尾が液滴本体から千切れ(?)取り残され小さな液滴として点在(残存)したり、試験後に傾斜台を水平に戻すと液滴が滑落した経路上に液滴の一部が戻り液体の帯を作る表面もあります。

 

 一方撥水性の高い表面は一桁という低い傾斜角度で液滴が滑落し、後退接触角も100度以上と大きいです。滑落角度が一桁というと、液滴を垂らした試験片を液滴を動かさずに手で持ち上げるにも苦労します(笑)。若い子はサクサクっと何の苦労もなく持ち上げますが(笑)。アッ!歳がバレそう。。。。

 

 さて両者の付着エネルギは親水性の場合は大きく、撥水性の表面は小さいです。しかし表面によっては静的接触角が100度近くても付着エネルギが一桁の場合もあったり、二桁の場合もありました。またこの時の後退接触角には倍以上の開きがあったりと、私の実験する限りにおいては静的接触角は何かの指標には活用しにくい感じです。具体的には液滴が自重でつぶれ気味にならずに接触角を測定出来るように1.5μlの液量で液滴を作り静的接触角を測定すると接触角が100度近い撥水系を示す表面でも、水をジャンジャン流した後は水が濡れ広がり親水系であったりします。

 

 ところで表面に目に見えないくらいの微細な凹凸を付与することで接触面積を削減し粉体付着抑制を実現する弊社のMD処理(Micro Dimple処理)の場合、表面自由エネルギ、付着エネルギ共に大きな値で滑水性も低いです。このことから粉体付着抑制に関しては表面テクスチャの効果(表面形状効果)の方が支配的のようです。表面自由エネルギや付着エネルギは同一条件下では材料によって一義的に決まる値ですが、MD処理により見掛け上の表面自由エネルギや付着エネルギを自由自在にとは申しませんがある程度大きくコントロールすることが可能です。これにより未処理面に対し粉体付着抑制や、洗浄性向上、滑り性向上、等、目的に応じた要求性能を満たす事が可能となります。

 

 以上、私の実験した範囲での結果ですが、今後これらの結果も参考にし更に開発を続け、粉体付着抑制, 洗浄性向上, 滑り性向上, 目詰まり抑制等を高次元で実現する表面を作り出す所存です!どうぞ宜しくお願い致します。